告白
群大医学部のキャンパス。
その廊下を黒く艶やかな髪をなびかせて颯爽と歩く女性。
涼介はその姿を目にとめると真っ直ぐに彼女へと足を向ける。
「 」
そう一言声をかけた。
と呼ばれた女性はゆっくりと歩みを止めると涼介の方へ振り向いた。
「何?高橋君」
「今日はまだ帰れそうにないぞ」
溜息混じりに告げる。
「また?いい加減私達に頼り切るの止めて欲しいわね」
うんざりした表情を浮かべる。
「同感だな」
二人は医学部で1、2を争う優秀な学生だ。
今回組まれた研究グループでは偶然一緒になった。
同じグループに属する学生達は大いに喜んだ事だろう。
と高橋涼介がいれば研究は成功したも同然だ、と。
勿論二人にとってはいい迷惑でしかない。
「私達の研究でもある以上放っておくワケにもいかないものね。行きましょうか」
「そうだな、さっさと片付けて帰りたいからな」
意見が一致した所で二人は研究室へ足を向けた。
「高橋君、徹夜続きでしょう?」
歩きながら喋る 。
「そう言う
こそ」
「あら、バレてたの。家に帰っても色々とやる事があってね」
そう言って苦笑する。
「お互い睡眠時間確保の為に一頑張りするか」
涼介は言いながら研究室の扉を開ける。
を先に室内へ入れてから自分も入室する。
「あーっ
ちゃん!良かったーまだ帰ってなかったんだね、助かった〜」
「高橋連れて来てくれたんだな。マジで助かったよ」
グループのメンバーは安堵の表情で二人を迎えた。
黙々と作業するグループ一同。
研究室は沈黙が支配している。
と涼介は1番厄介な問題を押し付けられている。
しかし特に苦もなく作業を進めている様に見える。
二人は研究室の端の机にかじりついている状態。
他の学生は反対側の端の机を陣取って二人の邪魔をしない様気遣っているつもりらしい。
二人にしてみれば単に難題に関わりたくないが為に離れている様にしか見えないが。
(こんなんで医者になったらどうするつもりかしらね)
は思わず心の中で呟く。
気分を切り替えたくなった
は涼介へ喋りかける。
「赤城の白い彗星様も大変ね」
驚く涼介。
目が僅かに見開かれ、手も止まってしまっている。
はそんな涼介を見てクスリと笑い続けた。
「学業と走り屋の両立なんて」
「
?」
訝しげな表情の涼介。
「何?」
楽しそうに返す 。
「いつから知っていた?」
「高橋君が一人で走っていた頃から」
「最初から、と言う事か?」
「そうとも言うわね」
笑いを堪えきれない様子の 。
「
が峠にギャラリーに来る様なヤツだとは思ってなかったな。驚かされた」
「それは違うわね」
ニヤ、とキャンパスでは見せた事のない笑いをしてみせる。
不敵で攻撃的な笑み。
クールなイメージしかなかっただけに涼介は軽い衝撃を受けた。
それに構わず
は続ける。
「告白するわ。 は秋名をホームにしている走り屋です」
涼介は言葉が出ない。
「ウチは両親とも医者だし、きょうだいも皆医学関係の仕事に就いてるけど…
揃いも揃って走り屋なのよね。医学一家であると同時に走り屋一家でもあるのよ」
「そ、それは衝撃の告白だな…」
なんとかそれだけ絞り出す涼介。
「さて、そっちも終わりみたいね。こっちも終わりだから。私はこれで帰るわね。大事な相棒のFCが待ってるからvv」
笑顔でひらひらと手を振ると
はさっさと研究室を後にした。
呆けた涼介を残して。
++後書き…もとい言い訳++
愛の告白ではなく走り屋である事を告白させてみました
これ夢じゃない…(T-T)
久々に書いたのがこんなんで良いのかしら…いやっ良くないーっ!
しかも短いし…
でもこれって続編書けそう?
−2003/3/28−