ヒロイン

 

 

 

 


彼女はザフト軍の優秀な技術者であり…

ザフトのヒロインである

 

 

 

「さてさて♪お宝はどこかしらvv

パイロットスーツに身を包んだ華奢な人物。
メットを外すと無重力に髪が流れる。
サラリとした青く長い髪を踊らせた少女だ。

「ご足労有難う御座います」

少女へ低い声がかけられる。

「これはこれは。クルーゼ隊長自らお出迎えだなんて光栄です」

少女はにっこりと微笑んだ。
それに対しクルーゼも口元に笑みを浮かべて見せる。

「ドックへご案内致しましょう。パイロット達も待ち焦がれている頃ですよ」

 

 

 

クルーゼに連れられドックへとやって来た少女――
ドックにそびえ立つ4機の機動兵器を見上げている。
その瞳は先程とは違い強い光が宿っている。

「これを連合軍が、ね」

そう言うと はフッと目を細める。

「どうぞ、じっくりその目でご確認下さい。 嬢」
「そうさせて貰います」

は元の穏やかな瞳を向ける。
その視線をしっかりと受け止めてからクルーゼは を機体の足下へと促した。
そこには赤い軍服をまとった四人の少年。
クルーゼと の姿を認めた四人はスッと手を持ち上げて敬礼をする。

「お久しぶりですね。アスラン、イザーク、ニコル、ディアッカ」

クルーゼは無言で手を下ろす様ジェスチャーする。
それに従い四人は腕を下ろす。

「では私はこれで失礼致します。ごゆっくり」
「ええ。チェックが済みましたらお伺い致します」

無機質な仮面に顔を隠した人物を笑顔で見送る
その姿が見えなくなると四人に向き直る。

「じゃあ機体見せて貰うわね。先ずは…アスランの機体からいい?」

 

 

 

「終わりか?」

四機の機体チェックを終えた に声をかけたのはイザーク。

「一通りのチェックは終了です。後は次回、戦闘へ出撃する機会を待って戦闘データをまとめます」
から見てどうなワケ?ナチュラル製MSは?」
「そうですね…正直驚きました。
OSは皆が書き換えたという事なのでこれは別にして、機体性能は申し分ない物だと思いますよ」

手元のパソコンから目を離さずに答える

「…これで良し。では私はクルーゼ隊長の所へ行って来ますね」
「ええ、また後ほど」
「そうね、皆でお茶でもしましょう。あ、アスラン、後で覚えてる限りでいいから初期OSの事教えてね」
「ああ、いいよ。あまり意味がある様にも思えないけど。 の気が済むなら」
「じゃ、宜しく〜」

アスランに僅かに砕けた笑みを見せてから、三人へ穏やかな笑みを向けるとその場を後にした。
小さくなる の後ろ姿を見送る四人。
その姿が見えなくなるとイザークが口を開く。

「相変わらず我等が姫は貴様にばかりいい顔を見せるな。…腹立たしい」
「まーったくだよねぇ。いくら幼馴染みでも納得出来ねぇよな〜」

アスランは「またか…」とそっと溜息を吐く。

「そうですよねぇ。初期OSの事だって何もアスランでなければいけない事でもないですし」
「に、ニコルまで…」
「で?実際のトコはどうなワケよ?」

ディアッカはアスランの肩に手を置いて覗き込む様に聞く。
いや、正確には問いただすと言った方が正しいだろう。
その瞳は鋭さを含んでいる。

「何の事だよ」
と貴様の関係に決まってるだろう!?」

イザークが苛立たしげに声を上げる。

「だから幼馴染みだろ。他に何があるって言うんだ」
「「「本当なんだな(ですね)!?」」」
「嘘言ってどうなるんだよ。大体俺にはラクスがいるじゃないか…」

溜息をもらしつつチラリと横に並ぶ三人へ視線を向けた。

「そう言えば…昨日たまたま部屋を片付けていたら の写真が出てきたんだ」

アスランは静かに言った。
その言葉に大袈裟なリアクションで反応するイザークとディアッカ。
ニコルは何の事か、と首を傾げている。

「「買った!」」

アスランに飛び付きそうな勢いでイザークとディアッカの二人が叫んだ。
ニコルはやはり何の事かわからず目を大きく見開くばかりだ。

「わかった。いつもと同じ、代金と引き替えで宜しく頼む」
「わかっているっ」
「りょ〜ぅかい」

返事を返した二人はさっさと部屋へと足を向ける。
ニコルはそんな三人のやり取りに納得した様に一人頷く。

「アスラン」
「何だ、ニコル」

引っ掛かったな…

「もしや、と思いますが… の写真を売り捌いているんですか?」
はザフトのヒロインだからな。売り上げは良好だ。で?」

口元だけに笑みを浮かべるアスラン。

「金に糸目は付けません」

ニコルはそれだけ発する。

「わかった。数日中にアルバムをまとめておこう」

そう言い残すと、アスランは自室へと向かう。
部屋に着く頃にはイザークとディアッカが代金を持って押し掛ける事だろう。

 

 

 

「アスラン。 です」

扉の向こうから聞こえた高く澄んだ声。
アスランはすぐにロックを解除し、扉を開ける。
部屋の中へ を通すと扉を閉め、ロックをかけた。

「どうだった?」
「聞くまでもないだろ。速攻で食い付いて来たさ」

そう言ったアスランは含み笑いを浮かべる。

「そう。じゃあ今期の売り上げはどんなもん?」
「前期より上がってるな。上客も一人増えたぞ」
「上客?」
「ああニコルがな。金に糸目は付けないそうだ」
「それはそれは。じゃあ少しくらいいい写真付けとかなきゃね〜」

ふふふ、と楽しそうに笑う
皆の前で穏やかに微笑んでいた少女と同一人物とは思えない程に雰囲気が一変している。

「それと、これは今期の売り上げな」

が部屋を訪れる前にイザーク達に売った分の代金を合わせて差し出す。

「ん、じゃあはい。こっちはアスランの取り分ね。いつもご苦労〜」

二人の中で定めた割合に基づいてアスランに分けられる代金。

「どうも。ニコルの分の写真もまとめておいてくれよ」
「わかってる、わかってる。それにしても毎回よく売れるモンねぇ」

ニヤニヤと笑う
その手には売り上げをまとめた表がある。
常に右上がりだ。

「本性も知らずにな」

アスランはくつくつと笑う。

「そりゃあねぇ。私の猫被りも板に付いたモンでしょ?」
「そうだな…幼年学校時代から続く商売だからなぁ。年季の入った事で」

顔を見合わせた二人は思いきり笑い飛ばした。

「ま、今更止められないよな」
「こんな美味しい思いしちゃったらね」

二人は額を合わせて笑い続けた。

「あー…売り上げも好調だし、次に休暇でも入ったらラクスに何かプレゼントでも買って行くんだね。
滅多に顔合わせないんだからさ」
「そうだな…。新しいハロでも作るか」

真顔でアスランは呟く。

「…あのねぇ」

溜息混じりの呆れた声を発する
ハロはもう充分だ、と言いたいのだろう。
ごもっともな話だ。

「あ、そろそろ隊長の所へ行かないと…」
「何、仕事?」
「いや、仕事は仕事でも"コッチ"のな」

写真の入った封筒をちらつかせるアスラン。

「ぷっ。そ、いってらっしゃい。クルーゼ隊長もいいカモなのよねぇ」
「1番の上客だからな、隊長は」
「そーねぇ、そのうちボーナススナップでもつけるかー。っと、私は皆とお茶して好感度アップに努めて来よう〜っと♪」

ベッドにゴロゴロと横たえていた体をガバッと持ち上げた
そのまま扉の方へと歩を進める。
アスランもその後に続く。

「んじゃ、株落とさない様に」
「そっちこそ大事なお客の機嫌損ねない様にしてよ〜」

 


彼女はザフト軍の優秀な技術者であり、ヒロインである

そして…その本性を知る者はアスラン唯一人であった

 

 


 

++後書き…もとい言い訳++

こりゃ夢じゃない…
ただの名前変換小説だよ〜
ネタ思い付いた時はもう少しマトモな話だった筈なのになぁ
いざカタチにしてみたらこんなんだしぃ
すいませ〜んっ(T-T)
でも裏のあるヒロインって好きだわ〜(ぇ)

−2003/5/30−