出会いはこんなカタチ

 

 

 

 

 

目が覚めた時、そこは既に薄暗い牢獄だった。

「あぁれぇぇぇ?ココ……ドコよ?」

冷たい石の床に寝ていた
気持ちばかりの薄い毛布が敷かれていたが、そんな薄い毛布では床の硬さも誤魔化せない。
背中は痛いし体は冷え切って強張っている。
冷えで思う様に動かない体を何とか起こす。

ズキン!

「…ッ!」

突然頭部に走った痛み。
そして思い出す。

「あー…そっか、そっかー。私、捕まったんだよ。そうそう」

ポン!と掌を打ち、こくこくと頷きながら は現在の状況に納得する。
そして次第に滲み出てくる怒りの表情。
こめかみに青筋を浮き上がらせた は叫び暴れ出したい気持ちを押し込めて、取り調べが開始されるのを大人しく待った。
ここで暴れて立場を悪くするわけにもいかないのだから。
やがて、拘束された は取り調べが行われるであろう部屋へと通された。

「さて、大人しく自供してくれると有り難いんだけど」

事件を起こした人物とは思えない にとまどいを隠せない軍人らしき男。

「そうでしょうね。でも残念ながら、人違いです。自供のしようがありません」

はにっこりと笑顔でそう返したのだった。
目の前の軍人はそんなバカな、とでも言いたげな顔でポカンとしている。
は内心、この軍人が怒り出して脅迫まがいに自供を迫られたらどうしよう…などと考えてしまう。
しかし、天も を見放しはしなかった様だ。
すぐに真犯人発見と釈放の通知が届いた。

 

 

 

 

 

「いや、悪かったね」

そう言ったのは向かい側のソファにかけている秀麗な軍人。
そちらにばかり向きそうな目線を、努めて他の方向へ向けようと奮闘する
しかし言いたい事は忘れずに言う。

「ホント、イイ迷惑でした。次からは気を付けて貰いたいモンですねー」

ぶーたれて文句を放ったのだ。
そう、偶然追われていた犯人と遭遇してしまった上に、体格と服装が似ていたせいで替え玉に仕立て上げられてしまった
犯人にも腹が立つがあっさり騙された軍にも腹が立つ。

「勿論、埋め合わせてはさせて頂こう」

優雅に微笑まれてしまう。

「え、ほんとですか!?あ…で、本物の犯人は捕まえたんですか?」
「ああ今頃掴まっているだろう。もう此方に向かっているかな」
「出来るものなら一発殴っておきたいもんですね」

は言いながら犯人に替え玉にされた時に殴られた箇所をさする。

「怪我をしているのか?」

ハッとして腰を浮かせた軍人。

「あっ、大した事ないんで!気にしないで下さい。…ちょっとコブになった程度ですし」
「気にしないではいられないな。軽傷とはいえ女性に怪我を負わせるとは…」

向かい合って座っていたソファから立ち上がった軍人は、 の隣に座り直す。
同じ部屋に二人きりでいるだけでも鼓動が早まるというのに、すぐ隣に座られたら、
しかも真っ直ぐに見詰められたらとても平静を保てない。
顔が熱を帯びていく。
はそれを隠す様に横を向く。

「当然だが犯人の裁きを君に委ねる事は出来ない。その代わり、私が君に付き合う事で免除しては貰えないかな?」

犯人に不快な気分を味合わされた分、彼が の気分を上昇させてくれるのだと言う。
は信じられないという顔で彼を見上げた。
嘘を吐いている表情には見えない。

「私はロイ・マスタング。君の名を教えてはくれないか?」
…です。

緊張し過ぎて声だけではなく心臓まで出て飛び出しそうに思えて上手く喋れない。
が、ロイにはちゃんと聞こえていた様だ。
小さく反芻する声が届く。
それだけでも何だか恥ずかしく感じる。

「では約束だ。後日ゆっくり、デートをしよう」

満足そうに深く笑む。
は赤い顔でただ頷く事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

「大佐。ひとつお聞きしたいのですが…」

腑に落ちない表情をしているのはロイの部下であるホークアイ中尉だ。

「なんだ?」
「昨日捕まった犯人が牢で伸びていたそうです。心当たりありませんか?」

フッと口元に笑みを浮かべたロイ。

「さぁ、な」

どうやら一発殴っておきたいと発言した に代わって実行していたらしい。
仕事は怠けても女性関係だけは律儀なロイなのであった。

 

 

 

 


 

++後書き…もとい言い訳++

これって夢?(聞くな)
単に冤罪で捕まっちゃうヒロインが書いてみたかっただけ(爆)
よって他のシーンは適当(マテ)
ロイ夢じゃなくても、いやそもそもハガレン夢じゃなくても良い品;;
つーか、続編(デート編)も書くべき?

−2003/11/9−