秘密

 

 

 

 

 

東方司令部内医務室。
椅子にかけ、足をぷらぷらさせている
前方には軍医、後方にはリザ。
たった今 の診察が終わったところである。

「どうだった?」

そこへ現れたのはロイだ。

「傷はほぼ治っているそうです。本人も痛みはおさまったと言っていますし」
「うん、動き回っても平気みたい。昨日なんか久々に木の上でお昼寝したよー」

言いながら椅子から立ち上がり肩を回す。
しかし の言葉を聞いたロイは呆れ顔だ。

「… 、危ない事はやめなさい」
「へ?」

目をぱちくりさせキョトンとした顔を見せる。
思えば随分と表情を見せる様になったものだ。

「ひとつ、気になる事はありますが…」

腑に落ちないという顔をしている軍医。
顎に手を添え、考え込む様にしている。

「何か問題があるのか?」
「問題と言いますか、本来ない筈の骨があった形跡がある様でして…。
骨自体は既にありませんが、この怪我はそれを切り落としたものではないかと」

は思わず口の端を引きつらせてしまう。
三人の視線が へと集中する。

「診察終わったんだよねっ。じゃ!」

空笑いを残し、持ち前の素早さで逃亡。

「あ、コラ! !」

すかさず伸ばされたロイの腕は宙を掴む事しか出来なかった。

「生まれつきの奇形でしょうかね」

強く問うつもりがないらしい医者は の去って行った方向を見ながらもらした。

 

 

 

 

 

逃亡したと思われた はロイとリザが職務室へ戻るといつもの様に読書に耽っていた。
何事もなかったかの様に。
そんな に苦笑し顔を見合わせるロイとリザ。
顔を合わせたら問い詰められる、とは思わなかったのだろうか。
がそのつもりなら、と二人も何事もなかった様に仕事に向かい始めた。
ところがロイはどうにも気になるらしくイマイチ仕事に精が出ない。
時折 の方へ視線を向けては書類へ向き直り、ペンを走らせる間もなく再び を見る。
そんな動作ばかり繰り返していた。

とうとう耐えきれなくなったのか、ロイは声をかけた。

「何ー」

本に向いたまま生返事を返す
ロイはそれも構わず続ける。

「背の怪我は医者の言っていた通りなのか?」
「……‥」
「何も自分で切らずとも病院へ行けば良かっただろう。危うく命を落とす所だったんだぞ」
「あー、私調べたい事あったんだ!じゃ、ちゃんと仕事しなよ!」

しかしまたも逃げてしまう

「どうやら聞かれたくない様ですね」
「ああ。しかし、ああ隠されると余計に気になるな…」
「無理に聞き出す様な真似はなさらないで下さいよ。せっかく心を開き始めているのに、また嫌われますよ」

気になるのはリザとて同じ事。
だが始めの頃の に逆戻りして警戒されてしまうのも困る。

「それは嫌だな」

ロイは肩を竦めた。
特に自分が嫌われていた事を思い出して。
その後、昼休みまでロイの集中力が途切れる事はなかった。
ところがその昼休みに と顔を合わせればまた気になりだして仕方がない。
昼食をとる為に食堂へ向かう とロイ。
ロイは好奇心に負けたのかまたも傷の話を持ち出してしまった。

「何でそんなに気にするの?」

これでもかと嫌そうな表情をして見せる

「気になるものは気になる。それが の事なら尚更だ」
「んじゃ、忘れてみる?」

何処からか鉄パイプを取り出して構える
ロイは思わず後退る。

「…ッ!そ、それは遠慮したいな」
「なら聞くな」

ツンと横を向く
余程言いたくないのだろう。

「しかしなぁ」
「しつこいよ」

尚も食い下がるロイ。
はムッとしてズンズン歩いて行く。

。ただの奇形なのだろう?そこまで隠す事では…」
「奇形!?」

急に立ち止まった は言葉と同時に勢い良く振り返る。
軍医のもらした言葉を聞いていない は怒声を発した。

「失礼ねっ、アレはそんなんじゃない!!」
「奇形ではないのか。では何なんだ?」
「あ…」

ロイの冷静な声で我に返った
このままではなし崩しに問い詰められてしまうと焦る。

「話せないのか?」
「…‥ッ」

焦りで考えがまとまらず、言葉に詰まってしまう。

先を促すかの様なロイの声。
じっとりと掌に浮かぶ汗。
それを握り締める様に拳に力が入る。

「軍の狗の知る事じゃないッ!!」

 

 

 


 

++後書き…もとい言い訳++

うわぁー1ヶ月半ぶりの更新だ(滝汗)
駄目人間っぷりを晒してしまいましたね…(今更か?)
それなのに短いしー。
まぁ、7話は当初からこの程度の予定でしたが。
もっと短くなるかと思ってたくらいだし。
って事でヒロインとロイの衝突とヒロインの隠し事でした。
8話は出来るだけ早くアップ出来る様にしたいな…
話は出来上がってるからその気にさえなれば早い筈。
頑張らねばーッ☆

−2004/2/2−