「趙将軍、 姫様を知りませぬか?」

女官長に呼び止められ、何事かと思えば。

の所在を唐突に尋ねられる。

「・・・・・何故私に尋ねられるのですか?」

聞けば、朝餉以降 の姿を見ないのだという。

自分よりも、もっと適任の人物を脳裏に思い出しながら問いかける。

「諸葛亮殿に・・・・・・・・・」

「諸葛軍師様に言われてお探ししているのです」

女官長の答えに、思わず溜息を吐いてしまいたくなる。

「諸葛亮殿は何と?」

「護衛武将であられる趙将軍がご存知だろうとのことでした」

深く頭を下げたままの女官長は落ち着いた口調だが、声には心配と困惑が見て取れる。

「分かりました、探します」

「申し訳ございません、有難うございます」

女官長の言葉に諾を返して、 の部屋に向かう。

会話をしているうちに戻っている可能性もあるからだ。

だが、部屋に気配は無く。

彼女に懐いている白い鷲も、止まり木に居ない。

あの白い鷲は彼女の傍を離れないのだから、近くに居ないのは間違いないだろう。

中庭を見て回るが、 は見当たらない。

他に居そうな場所と言えば、書架くらいだろうか。

嘆息して、踵を返して気が付く。

あんな場所に、小路があっただろうか・・・・・?

生い茂る木々で気が付かなかったが、人が一人通れるであろう路がある。

何とはなしに、足を向ければ。

大木が現れる。

こんな場所があったのか、と思い木を見上げれば。

「・・・・・・・・・・・」

見間違い、では無いだろう。

見た目は、姫として申し分ない。

容姿は出会う人間の殆どが、口を揃えて「美しい」と認めるだろうし、所作の一つ一つも粗野なところは無い。

無い、が。

普通の姫は、欄干に腰をかけたりしない。

ましてや、木の上で昼寝だとありえない。

じっと見つめていても状況は変わらないだろう。

深く嘆息する。

驚かせては危ない。

まずは、声をかける。

「・・・・・・・・・ 殿」

反応は無い。

もう一度呼ぶ。

殿」

声に気が付いたのは、 ではなく。

彼女の傍から片時も離れない白い鷲。

殿!」

大きめな声で呼びかけると、鷲が翼を羽ばたかせる。

その音で目が覚めたのだろう。

暢気な声が上から響く。

「んー・・・・・。白露・・・・?」

殿」

「ん??・・・・趙将軍」

こちらの姿を認めて、名前を呼ばれる。

「・・・・・・・諸葛亮殿が呼んでおられます」

要件を告げて、来た道を戻ろうとすれば。

「待ってください!」

呼び止められる。

「何ですか」

「あの、梯子を持ってきていただけないでしょうか」

「・・・・・・・・・」

自力で登って下りられない経緯を確認する。

木の上にある巣から落ちていた雛を拾って戻したは良いが、今度はあまりの高さに降りられなくなった、との事。

降りられなくて仕方なく昼寝をしていたという。

「・・・・・・・間抜けですね」

「・・・・・・・・・」

むっとしているのは分かるのだが。

他に言いようもない。

木の幹を数度叩いて確認する。

かなり確りした木だ。

「そこで大人しくしていてください」

手近な枝から渡って、 が居る枝まで辿り着く。

武将である自分にとっては大したことのない高さだが、彼女には十分高いだろう。

抱えて降りるならば、飛び降りるのが一番手っ取り早い。

「この体勢、何気に恥ずかしいんですけど」

「・・・・・・この体勢以外で安全に飛び降りれる方法があるなら教えてください」

横抱きにした からの抗議をあしらう。

「こう、担ぐとか」

「担いで枝に頭などぶつけないとは言い切れません。登って降りられなくなった方ですから」

「うう」

反論できないのか、呻いて両手で顔を隠してしまう。

殿、危ないから手は私の首に回してください」

渋々、といった感じで が華奢な腕を回すのを確認し。

を確り抱きしめて枝から地上へと飛び降りる。

殿」

目を瞑ったままの に声をかける。

ふるふると小刻みに震えているのは、気のせいではないだろう。

軍師見習いとして奇才を振るって武将とやりあう豪胆さを持っているが。

年頃の娘に変わりは無い。

「もう、大丈夫ですよ」

薄い瞼が開いて、黒曜石のような瞳が現れる。

「た、助かりました」

「いえ」

抱き上げていた彼女を降ろすが、震えが止まらないのだろう。

足元がおぼつかない。

どうにも危なっかしい足取りに嘆息する。

「きゃあ!」

横抱きにもう一度抱き上げる。

「その調子では、諸葛亮殿の元までどれ程かかるか分かりません」

「ちょ、ちょっと!」

「大人しく為さった方が宜しいですよ。騒げば目立ちます」

大人しくなった を抱えて、諸葛亮の執務室まで向かう。

相変わらず軽い。

「あの・・・・・・・」

「何ですか」

困ったように見上げてくる に答えれば。

「有難うございます」

「構いません。私は、貴女の護衛武将ですから」

知らず、口元に笑みが浮かぶ。






辿り着いた諸葛亮の執務室の前で鉢合わせた月英に含み笑いをされたのは、また別のお話。

 

 

 


 

10万打記念でございます。
連載趙雲で現時点での関係でできる限り甘くしてみました。(汗)
こ、こんな感じで宜しいでしょうか!?
タイトルは、苦し紛れです。>待て。
良いタイトルが有れば、適当に変更してくださいませ。(笑)
恐れ多くもフリー配布などをさせて頂いております。
宜しければお持ち帰りください。

こんなヘボサイトが、10万打!!
来て下さる姫君達に感謝をこめて。
深く。
深く。
感謝を。

本当に有難うございました!

 

 

織葉さんの作品が配布されていたらすかさず頂いてくるのがファンの務めです(ぇ)
趙雲にお姫さま抱っこー(>_<)
僕なら渋々じゃなくて喜んでしがみつきますよ!(いい迷惑です)
最後、月英さんに笑われた時趙雲はどんな表情をしていたのやら…。
その辺を想像するのも楽しいですなv(素直に妄想と言え。笑)
これからも応援しておりますよー!!