平凡な日曜日。
俺は自分の部屋でごろ寝、親父は居間で煙草でもふかしながら新聞を広げてるんだろうな。
ほんと、いつもと変わりない日曜日。
…の筈だったんだ。

 

 

 

 

豆腐グラタン

 

 

 

 

「こんにちは〜」

藤原豆腐店に一人の女性客。
しかしそれに応対する筈の声はない。
一瞬の沈黙が流れる。

「…ごめんくださ〜い」

もう一度呼びかける。
が、やはり反応はない。
二階の自室にいた拓海が仕方なさそうに階段を下り始める。

「誰もいないのかな?」

女性客は当然困っている。
手に持った財布をもてあそびながら店内を見渡す。

「すいません、お待たせしました」

ようやく拓海が店に出る。

「あれ、文太さんじゃない。初めましてだね?」
「え、あ、はい。親父今いないみたいで…」

そう言った矢先、帰って来たりするのである。

「ん?あぁ、 か」

文太だ。
「こんにちは〜、文太さん」

親しげな笑みを見せる と呼ばれた女性客。
名前で呼び合うあたり親しいのだろう。

(親父が客と仲良くしてる…)

意外そうな顔の拓海。

「今日はグラタンか?」
「うん♪」

(な、何の話だ??)

拓海は首を傾げるしかない。

「拓海」

急に拓海にふる文太。

「な、何だよ」
に木綿一丁やれ」

それだけ言うと背を向け、買ってきたばかりの煙草の封を開けている。
拓海は渋々木綿豆腐を一丁をそっと袋へ入れる。
は代金と引き替えに袋を受け取った。

「拓海君って言うんだ?私、 って言うの。宜しくね」

眩しい笑顔を向ける

「あ。よ、宜しく…」

思わず頬を染める拓海。
文太は背を向けたままニヤリと口の端を持ち上げている。

「今日はコレでグラタンにするんだ♪」
「豆腐で!?」

驚く拓海。

「あれ、知らない?豆腐グラタン。結構美味しいんだよ」

そう言い残すと文太に手を振って店を後にした。

「どうだ、拓海」

銜え煙草の文太は面白そうに拓海を振り返る。

「何がだよ」

ぶっきらぼうに返す。

「可愛いだろう? は」

文太の糸目がキラリと光った様に見えた。
拓海は本能的に後ずさった。
おさまりかけてたのにまた頬が蒸気するのが感じられる。
耳まで赤い。

「なっ、何ワケわかんねぇ事言ってんだよっ。親父!」

真っ赤な顔のまま、バタバタと喧しく階段を上って自室へ逃げ込んだ。

「ふむ。…素直だな」

残された文太はフッと笑みを浮かべ、いつもと違うオーラを纏って立っていたという…。

 

 

 

さん…か」

僅かに頬を染める拓海は自室の窓から の後ろ姿を見送りながら小さくその名を呼んだ。

「また来んのかな」

 

 


 

++後書き…もとい言い訳++

元ネタは勿論"豆腐グラタン"と"豆腐ハンバーグ"のCM
当然の如くハンバーグ編のお話に続きますvv
それにしても…文太が笑える
てか、涼風の書く文太っていつも変じゃないか?
おかしい、好きなのに…
因みにこの豆腐グラタンですが…食べた事ないです!
美味しいのかな?パンでグラタンは好きなんだけど

−2003/2/10−