目覚メ知ラヌ者ヨ…
今コソ道ガ拓カレル時ナリ

 

 

 

 

敵か?味方か?

 

 

 

 

 

「はい、ストーップ!」

話を聞き出そうと身を乗り出したサスケとサクラをカカシが止める。
二人は言葉には出さないが目で不満を訴えている。

「文句は聞かないよ。着替えさせるのが先ー」

そう言うカカシの視線は に向いている。
水が滴る髪、肌に張り付く服、血の気のない唇をした に。

「あ…そっか」
「そうさせてくれるなら嬉しいね」

既に体は冷え切り、寒くて仕方がない。
気付いて貰えた は内心安堵した。

「あの、これ着替えです。ナルトが女の人だって言ってたから。私の母のだけど」

サクラが持っていた荷物の中から服を取り出して に差し出す。
は礼と共にそれを受け取った。
慌てて取りに行ったのだろう、ナルトはタオルを差し出した。
それも受け取ると、四人は部屋を出て行った。
扉の向こうではカカシが気配を窺っているのが伝わってくる。
はそんな事など気にも留めずに片手で髪を拭きながら服をベッドに放った。
たたまれていた服は、パサ、とベッドに広がる。
その服を見た は思わず顔をしかめた。

「…は、半袖…‥よろしくないなぁ」

とは言ってもこのままでいるわけにもいかない。
躊躇していつまでもこうしていては怪しまれるし、何より風邪をひいてしまう。
は覚悟を決めて渡された服に袖を通した。

「終わったかなー?」
「え、ええ」

動きを止めた の気配を悟ったのかカカシが声を掛けてくる。
躊躇いながらも返事をすると、四人は再び部屋に入って来た。

「「「!!」」」

部屋に入った途端、三人の子供達が驚き目を見開く。
それも当然。
服の下に隠されていた の肌は覆い尽くす様な傷でいっぱいだったのだ。

(血のニオイがするな〜とは思ってたけどねぇ‥こりゃまたスゴイな)
(やはりこれはマズかったか‥)

突き刺さる様な視線を送る三人。
その瞳には警戒の色がありありと映し出されている。
初めから少なからず警戒されていたが、その度合いが一気に強まったのは明らかだ。

「ナルト、救急箱持っておいで」

そんな張り詰めた空気を裂いたのはカカシののんびりとした声だ。

「え?あ、ああ、うん。でもさ…」
「わかってるよ。いいから持っておいで」
「…わかったってばよ」

迷った様にカカシを見上げたナルト。
それでもカカシは救急箱を持ってくる事を促した。

「よく今まで何も言わなかったね〜。痛いデショ?」
「それは、まぁ。でも寒さのせいで幾分か麻痺してましたし」

カカシが敵か味方かもわからぬ相手に治療を施す意図が見えず、戸惑いながらも は返す。

「カカシ先生」

救急箱を抱えたナルトがやって来る。

「んじゃ、手当てしながら話聞いてもいーい?」
「どうぞ」
「まずはー…」

カカシは話しながら をベッドに座らせ、自分も隣に座って救急箱を開く。
のんびりと何から質問しようか考えるカカシの声を別の声が遮る。

「アンタこの里の人間か?」

サスケの声だ。

「いいや。私は霧隠れの里から来た」
「霧隠れ?」

は隠さずに事実を告げる。
そんな をサスケは睨み付ける。

「そんなに警戒しないで欲しいな。私は里で生活してはいたが正式な忍者ではないからね」
「どういう事?正式な忍者じゃないって」

不思議そうな顔をしたサクラが聞く。

「幼い頃は忍者となるべく教育されていた。が、適性がないと判断されてね。
これまで修行は怠らなかったが…私は忍者登録されていない」

そう言って、小さく溜息を吐いた。
諦めた様な表情で。

「そんなのアリかよ!ねぇちゃん忍者になりたかったんじゃないのかよ!?」

突然大声を上げたのはナルト。
どうして諦めるのかと、真っ直ぐな眼差しを向けている。

「…何故ナルトくんがそんなに怒るんだ?どんなに足掻いても無駄さ。現に私は追われている。母も殺された」
「お母さんが‥?」
「暗部の仕業だろうね。急所を一撃で仕留められていた。私の傷も奴等から受けたものだ」

ハッとしてやり切れない表情を浮かべるサクラ。
それに切なげな笑みを返す。

「よく暗部から逃げ切ったねぇ」

カカシからは感嘆の声。
暗部に追われたのならばこの傷にも納得がいく。
しかしこの程度で済まされるのだから驚くしかない。

「腕には自信がありますので。半分は殺(や)れたかと…」
「へぇ」

自信があると言う割にはそれを鼻に掛ける様子もなく、 は相変わらず感情を表に出さない。
時折見せるのは上辺だけの表情で、瞳は暗く沈んだままで光を映さない黒ダイヤの様。
無表情に語る をカカシは面白そうに見ている。
ナルトは警戒するのも忘れ、スゲースゲーと一人興奮していた。

「オイ、待てよ。アンタ適性がなかったんじゃないのかよ」

もっともなツッコミを入れたのはサスケだ。

「期待を下回る。たったそれだけで忍びの道から遠ざけられた。私は忍術の覚えが悪くてね。捨てられたんだよ、実の父親に」
「そんな事って…」
「私の父はね、里でも立場ある人間だったんだ。私の様な落ちこぼれは恥だと思ったんだろう。今は違うけどね」

そう、今では少なくとも暗部の手から逃れるだけの実力を持っている。

「しかし、いくらなんでも忍者登録もされてない子に暗部を差し向けるかなぁ。心当たりは?」

うーん、と呻っているカカシ。
は母が殺された理由も自分が追われる理由も皆目見当が付かなかった。
首を横に振るしかない。

「で、どうすんだよ」

先程よりは警戒心の解けた様子のサスケはカカシに向き直る。
ここまで包み隠さず明かされれば信じるしかないだろう。
それが本当なら、だが。
しかし を見ている限り嘘を吐いている様にも見えず、隙を窺っている様子もない。

「んー。とりあえず火影様に報告しなくちゃだよね〜」

他国の忍に狙われている人物を個人の判断で匿うわけにもいかない。
里長である火影の意見を乞うのは当然だ。
早速火影の元へ行こうとするカカシ。
それに気付いた は付け足す様に口を開いた。

「殺される前、母は言った」

一斉に四人の視線が集まる。

"成人したら‥木の葉隠れの里、 家へ行け"と」

カカシとサスケは瞠目し息を飲んだ。

「「 家!?」」

 

 

 

++後書き…もとい言い訳++

相変わらず涼風は謎のあるヒロインが大好きな模様(笑)
最後の変換で更に深まった感じ?
でもそこは3話の最初の方ですぐに判明しちゃいます(ぇ)
ヒロインの正体は次回明らかになっちゃいますね。
ナルト達はわからないけど。読者にはわかっちゃうなー。
とは言え他にも秘密のあるヒロインなので。ま、その辺はお楽しみって事で。
しかし夢小説としてはどうなんでしょうね、これ…;;
ただの名前変換小説ッスね。
まぁまだ出会い編だし!これからこれから!
あ、そうそう、文中で出てきた「黒ダイヤ」。これ、黒いダイヤモンドじゃないですよん。
石炭の事ですー。石炭の様な瞳→曇った光のない瞳、みたいな感じで。

−2004/11/7−