目覚メ知ラヌ者ヨ…
一歩ハ踏ミ出サレタ

 

 

 

 

うちはの血族

 

 

 

 

 

驚き声を上げたカカシとサスケ。
はその反応に驚きを見せ、首を傾げている。

「何が目的で へ近付く?」

和らいでいた筈の警戒を再び露わにしたサスケが を睨む。

「母は何も言わなかった。聞いても教えてくれなかったからね」
「それは行けばわかる、って事なのかな」
「おそらく。私も聞きたい。カカシさんとサスケくんが驚いた理由がね」

サスケの痛い程の視線を真っ直ぐに受け止めて答えた
今度は二人に問いかけた。

「そりゃ、驚くデショ? は既に滅びた一族だからねぇ」
「もう家も残ってないぜ。 はウチの、うちはの分家だ」

二人はさらりと返す。

「サスケくんの家の分家?」
「ああ」

まさか助けてくれた者達の中に縁者がいるとは…。
はこんな偶然もあるのかと呆けている。

最後の当主は二十年以上前に行方不明。うちはの血を狙う他国の忍に攫われただろうってウワサ」

カカシがそう付け足す。
は知っているとでも言うかの様に頷き、口を開いた。

「その彼女は十五年も前に病死したしな…」

サスケはこれでもかと目を見開き、腰を宙に浮かせている。
余程驚いたのだろう。

「何!?」
「え…ホントに?」

声を発したのはサスケとカカシだけだった。
サクラはただ話を聞く事に徹すると決めた様で、真剣な表情で を窺っている。
ナルトは話が難しくなるにつれて口数が減っている。
次第に話についていけなくなったのか、キョトキョトと皆の顔を順に見比べていた。

「なんでアンタがそんな事を知ってる!?」

気を取り直したサスケは、それまでかけていた椅子に腰を落ち着けてから質問する。

「彼女を攫ったのが霧隠れだからだ。それに母が彼女の世話役だったからね」
「霧隠れが…」
「じゃあ会った事あんの?」
「いや、私が母と暮らす様になったのは彼女が亡くなった後だったからね。会った事はない」

漸く口が挟めて嬉しかったのか、ナルトはにこにこと笑顔だ。
は無邪気な子だなぁ、と苦笑する。

さんのお母さんが の当主に何か頼まれてたのかしら?」
「さて、ね。だが家も残されてないのでは…どうしようもないね」

肩を竦めて「お手上げだね」と呟いている。

「うーん、ま、オレは火影様へ報告に行って来るよ。後は頼んだよー」
「「「え!?」」」

嘘臭い笑顔で片手を挙げて見せたカカシは瞬身の術で去ってしまった。

「カ、カカシ先生!?」
「頼んだよ、じゃないだろ…」
「どーすんだってばよー」

下忍三人は困った様子で顔を見合わせている。
こんな面倒事は上忍が率先して解決させるものではないのだろうか。

「まずは…、そ、そう!病院へ行くべきよね!」
「さっすがサクラちゃん!」

これだけの怪我と疲労。
病院へ行くのはもっともだ。
と言うよりも、もっと早くにそうすべきだったのだろうが。

「動けるのか?」
「大丈夫だよ、これくらい」
「ダメだってばよ!ちゃんと診てもらわないと」
「そうですよっ、こんなの応急処置なんですから。ちゃんと治療しないと傷跡残っちゃいますよ!」

三人はどうしても、と譲らない。
は「まぁ、いいか」とそれを受け入れる事にする。
もしも、万が一に、この里にまで追っ手が来る様ならば迷惑はかけられない。
その時は自らが戦えなくては悔いるだろう。
今、療養する事は重要だ。

 

 

 

「入院、だなんて生まれて初めてだよ…」

ポツリともらしたのは勿論
真っ白い病室で、真っ白いベッドの上で身を起こしている。
腕やら首やら顔やら、至る所が包帯やガーゼで白く染められている。

「一日だけなんですから大人しくしてて下さいね」
「別に逃げ出したりなんてしないよ。散々走り続けたからね、休めるのは有り難い」

そう言ってゆっくりと背に当てられている枕に寄り掛かった。

「ねぇちゃん、これからどーすんだってばよ」
「…火影次第、かな。今の所は」
「そっかぁ」

里から追い出されるのなら仕方ない。
里に置いて貰えるのならば甘えたい。
だが、どちらも火影次第だ。
確率としては前者である可能性が非常に高い。
里に混乱を招きかねない存在を易々と見逃して良い筈がないのだ。長として。

「じゃあな、 。オレ達は帰るぜ」
「ん、ありがとう」
「お大事に!」
「まったねー」

それぞれの言葉を置いて帰って行く子供達。
真っ白い病室は、いつの間にか夕日で橙色に染められていた。
同じ色の空を眺めながら思い浮かべたのは自分を捨てた父親。
母を殺させ、娘も殺させようとした父。
もう何年も会ってない父。

(父様…どこまで私を邪険にあしらえば気が済むの?どうして、私は、貴方の娘に生まれて来たんでしょうね…‥)

の父にとって が都合の悪い存在である様に、 にとっても父親はなんとも都合の悪い存在であった。
その理由を彼らが知った時、どんな顔をするのか。
はどっと疲れが押し寄せて来た様に感じ、瞳を閉じた。

 

 

 

++後書き…もとい言い訳++

また謎ばかりな3話目でした。
変換の都合上読者様にはヒロインの正体がバレちゃいましたが、気付かないフリしてやって下さい(ぇ)
話の中で明らかにされた時、ナルト達と一緒に驚いてやって下さると嬉しいです(笑)
今回はサスケとばかり話してた様な気が…。
ま、仕方ないか。うちはに関わるんじゃね。
次回は火影のじぃちゃんに会いに行きます〜。

−2004/11/19−