目覚メ知ラヌ者ヨ…
冷タキ血コソ目覚メノ一滴

 

 

 

 

火と水の姫

 

 

 

 

 

汗だくになって修行する三人の下忍。
はその相手をしながら三人を楽しげに眺めている。
今日は偶然会った紅と、紅が担当している下忍達の修行に付き合っていた。

(懸命に修行した子供の頃思い出すなぁ)

父の元で修行した幼い頃や、里の人間に隠れて交流していた友人達と修行した事が鮮明に思い出される。

、そろそろ時間じゃないの?」
「あ、ほんとですね」

三人の攻撃をさらりとかわしながら頭上に輝く太陽の位置を確認する。
それを隙と見た一人の少年下忍が に飛びかかっていく。

「ごめんね、私がお手伝いするのはここまで」

目にも留まらぬ速さで少年の背後を取った
少年の首元にはクナイが突き付けられている。
これで少年の負けをはっきりと知らしめたわけだ。

「… さん用事でもあんのか?」

その少年――キバは不満そうに問う。

「ちょっと調べなきゃならない事があるの。じゃあ紅さん、この辺で」
「ええ、ありがと」

はむくれるキバに苦笑を向け、紅に笑みを向ける。
紅も笑みを返して を見送る。

「あ‥いってらっしゃい さん」
「うん、行ってきます。ヒナタちゃん、キバくん、シノくん頑張ってね」
「はい!」
「おうッ」
「ああ」

にっこりと声援された三人はそれぞれの反応を返してから、早速修行に戻って行く。
紅は「なつかれたわね」とクスクス笑っている。
そこへ長身の影が現れる。

ちゃーん♪もういーい?」
「はい、私はここまでで」
「そっか。ま、後は紅の仕事だしね。 ちゃんはオレと行こっか」

にこにこと銀髪を揺らすカカシは の肩に腕を回している。

「…はぁ、さっさと行きなさい。 、何かされそうになったら殺っちゃいなさいよ」

カカシの様子に溜息を吐いた紅はぽやんとしている に注意を促す。

「ひっどいなー」
「カカシさん相手じゃ難しいですよ〜」

紅の言葉に不満を漏らしたカカシはきゅうっと の首に絡まっている。
当の はそんな事など気にもかけずボケてくれている。

((や、殺る事についてツッコミはないの?))

カカシと紅は思わず心の中でそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

「カカシ先生ー、 ねぇちゃーん!」
「ナルトくん、こんにちは」

元気に飛び跳ねて手を振っていたナルトに は挨拶する。

「さすがに今日は時間通りだな」
さんが一緒だものね」

サスケとサクラは、カカシに「いつもこうならいいのに」という目をしてみせていた。
それを見た は「遅刻魔なんですか?」とカカシを責める様な顔。

「…まぁ、そんな事は置いといて。行きますか〜」

ゴホン、とわざとらしい咳をしてみせて一人歩き出すカカシ。

「「「どこに?」」」

下忍達はその場に立ち止まったままカカシの背を見ている。
も何処へ行くのか知らされてないらしく、首を傾げていた。
カカシはくるりと振り返るとにっこり笑って言った。

「サスケの家♪」
「はぁ!?」
「サスケの家なんて行ってどうすんだってばよー」

ナルトとサスケは不満顔だ。
唯一サクラだけが"サスケの家"と聞いて輝いた表情をしているが。

「あぁ、そういう事ですか」

はカカシの意図がわかったのかなにやら一人納得している。

「そ。そういう事なの」
「どういう事だよっ」
ちゃんの目的は でしょ。その家が残されてないなら本家のうちは家へ行くしかないんじゃないの?」

同意する様に頷いてサスケを見詰める
忘れていたわけではないが、全くの無関係ではなかった事を思い出したサスケ。

「駄目かな…やっぱり」
「う…し、仕方ねぇな」

しゅん、となってしまった を見ると嫌とは言えないサスケはつい、うっかり、許可してしまったのだった。
一行はうちは家へと移動し、 に関わる物や情報を集める事とした。

「オイ、ナルトてめーウチの物グチャグチャにしてんじゃねーよ!」
「そーよ、もっと丁寧に扱えないの?」

たくさんの物が積み上げられている蔵の中で、四人は に関わる物がないか捜索中である。
黙々と作業に徹していたのだが、ホイホイと投げる様に物を扱うナルトに堪りかねたサスケがとうとう怒声をあげた。
サクラも肩を持つ様にサスケの隣に並んでナルトを睨む。

「あ、あとで片付ければ…」
「貴重品も多いだろうから、気を付けよ。ね?ナルトくん」
「…うん」

怖い顔の二人に後退ったナルトは言い訳を述べようとする。
が、それを遮る様に がナルトを諭す。
下手な言い訳をさせれば、きっとサクラあたりが突っかかっていくだろうと思っての事だ。
の思惑が伝わったわけではないだろうが、ナルトは素直に頷いて散らかした物を片付け始める。

「しかし見付からないもんだねぇ〜」

作業に嫌気が差したらしいカカシが溜息混じりに言い、 の肩に顎を乗せる。
それを見たナルトとサクラはギロッとカカシを睨むとぎゃーぎゃーと文句を吐く。

「あ、あったぜ。うちはで預かってた の物」
「ほんと!?」
「ほらよ」

騒ぎ立てる二人を余所に、サスケは埃にまみれながらも捜し物に集中していた様だ。
探し当てた物を へ投げ渡す。
一つは の手の中へ、もう一つはカカシの頭にヒットしてから に渡った。

「イテッ」

どうやら先程カカシが にくっついた事に腹を立てたのはナルトとサクラだけではなかったらしい。

「巻物ぉー?」
「あ、これ家系図だ」

が受け取ったのは二本の巻物。
一本をナルトに持たせて、 はもう一本の巻物を開き見る。

「ちょ、ちょっと待ってサスケくん。巻物二本だけ?」
「ああ。それだけだ」
「家系図と…こっちは口寄せ動物との契約書か。代々の当主の名ばかりだな」

サクラはまだあるだろうと思ったが、サスケはそれ以外にはないと言い切る。
それならばこの二本の巻物に何か秘密が隠されているのかと、 が手にしている巻物を覗き込んでいる。

「ねぇ、カカシ先生。この家系図なんか変」

何の変哲もない家系図。
だがサクラはおかしな点に気付く。

「なにが?」
「だって…同じ家との婚姻が何度も」

変だと言われ、気になったナルトも家系図の巻物を横から覗く。

「そういう家系なんだよ、 は」
「それじゃさっぱりわかんねーってばよ!」

簡潔に言ったサスケにナルトは噛み付く。

「カカシさん」
「そんな目で見なくても説明してあげるよ、 ちゃん」

わかる様に言え、そんな視線をカカシに送ったのは
カカシはそんな様子に苦笑いし、サスケを見る。
頷いたサスケはすぐに口を開いた。

はうちはの分家で写輪眼を受け継ぐ一族だった」
「優秀な忍を輩出する名門家だったんだけどね。血の薄い分家だったからなのか、写輪眼の継承率が低くてね」
「そこで思い付いたのが他家の血継限界を取り込む事だったんだよ」
「じゃあ、この何度も婚姻をくり返してる家って…」
「そ。血継限界を持つ家」

サスケとカカシが交互に説明。
サクラも納得がいった様である。
言わずともわかって頂けると思うが、ナルトはクエスチョンマークを頭上に飛ばしては首を傾げている。

「でもそれではいつか血統の飽和を起こしますよ?」
「鋭いねー、 ちゃん。同じ一族との婚姻や血族婚が続いた事で血が濃くなり、一族は衰退していったんだよ」
「そうなった頃には血継限界の継承率はゼロだったしな」
「そうなんだ…」

明らかにされる 家の裏事情に は気持ち沈んだ表情を見せる。

「えーと、それで、 さんの目的ってどうなるの?」

もっともなツッコミを入れたのはサクラだ。

「…わからず仕舞い、だね」
「えーもう疲れたってばよー」
「少し休憩しよっか」

冴えない表情の
見付けられた二本の巻物はどう見ても母が言う様な物とは思えないのだから当然だ。
ナルトも単調な作業に飽いたらしく、ペタンと座り込んで動こうともしない。
何も言わないがサスケとサクラも疲れた様子を見せている。
カカシと は顔を見合わせ、少しの休憩を取る事とした。

「休憩ついでに、私の事も話しておくべきですね」
「…‥必要な話は聞いたデショ?」
「そうかも知れませんし、そうではないかも知れませんよ」

適当な場所に座った は話を切り出す。
カカシは少しの間を置いて、無理に過去を語る必要はないのだと言い含める。
しかし はそれをはね除けてしまう。
どうしても話しておきたい、という事だろうか。

「聞けって事ね」

肩を竦めて話を聞く意思表示を見せる。

「以前話した通り、私は霧隠れの里で生まれ育ちました。
優れた忍者である父に忍として必要なスキルを叩き込まれて、甘やかされて、楽しくて充実した日々を送っていたんです‥‥‥五歳になった頃までは。
本格的に忍術を教えられる様になって、私が忍術を覚えるのに他人より随分時間がかかる事がわかった。
その途端、優しかった父が冷たくなった。すぐに父の元を追われ母と暮らす様になりました。それでも忍者にはなりたくて、必死に修行に打ち込みました。
母が用意してくれた書物に書かれていた忍術は、何故か、すんなり覚えられて…忍者になれる!そう思った。
でも父の根回しでアカデミーに通う事すら出来なかった…‥」

淡々と語った
時折悲しそうに瞳を伏せ、時折悔しそうに唇を噛み、時折怒りに瞳を細めながら。
四人は口を挟めず、ただ聞き役に徹していた。
が言い終えても何を言えば良いものか見当も付かない。

「なーんでそこまで徹底的に排除しようとしたのかねぇ」
「まったくだな」

カカシは疑問を口にし、サスケも同意する。
は"忍術を使えない"のではなく"忍術を覚えるのが少し遅いだけ"なのだから。
直接見たわけではないとは言え、今では霧隠れの暗部をやり過ごすだけの実力まで有している。
切り捨てるにはあまりにも勿体ない逸材だったのではないだろうか。

「理由なんて一つしかない」

ギリ、と自らの拳に爪を立てる

「知ってんの?」

キョトンと聞き返すナルト。
カカシは先を促す様な視線を送りつつも、爪を立てる手をそっと外してやる。
は無意識でやっていたらしく、ハッとしながらも小さく礼を述べてから話を続けた。

「水影の娘としてはあまりにも不出来だ、といったところでしょうね」

さらりと吐き出された言葉。
そうなんだ、と納得しかけて、四人の動きは止まった。

「え?」

嘘でしょう?という顔を向けるサクラ。
ナルトもサスケも、カカシでさえも聞き違ったか?という顔で を見詰めている。

「私の父は水影。私は、水影の娘なの」

は四人の顔を順に見、目を合わせてはっきりと言い切った。
嘘でもなく、聞き違いでもなく、それが事実だと。

「「「「なんだって!?」」」」

カカシ達はそれだけ叫ぶと、暫しの間固まる事しか出来なかったという。

 

 

 

++後書き…もとい言い訳++

随分長めの5話でしたー。
書くのも疲れたよ…つか、腱鞘炎が痛いのん(T-T)
えーと。
とうとう分家の事とヒロインの父親が判明しました!
うわー、水影の娘ですってよ!
これで水影がすっげーじーさんだったり、女だったらどうしよう?って話ですがね(笑)
うちは分家の事は涼風めちゃ楽しんでたよ。
血継限界ってこんな風にいくつも受け継ぐ事って出来るのかなぁ?
この話ではそれは叶わなかった事になってますけどね。
取り敢えず次回で出会い編は終了になります。
そしたらやっとキャラとの絡みが書けるかなv
もー、カカシ好きなんで、カカシメインでいきます。はい。

−2004/12/10−