あったかいよる
冷たく澄んだ空気。
雲のない夜空には零れんばかりの星が瞬いている。
そんな星空の下を走り抜けるふたつの影。
任務帰りの と、任務の相方であった月光ハヤテの二人だ。「意外とあっさり片付きましたね」
「ゴホ。そうですね、 さんはお強いですから」白い息と共に吐き出された言葉。
それにハヤテが笑顔付きで返す。「なに言ってるんですか…今回私の出る幕なんてなかったですよー」
ぷう、と頬を膨らませて は言う。
「そうでしたか?」
「そうでした!」しらっと言うハヤテに強く言い返す 。
「しかし早く任務を終えられて良かったですね。今日は冷え込んでますから。ゴホゴホ」
ハヤテは苦笑して話題を逸らす。
話題転換された事に気付かなかった は納得の言葉を吐いた。「この時期ばかりは昼間の任務ほど嬉しいものはないですもんね」
「それは言えてますね。ゴホッ。…ところで、今夜は随分と夜更かしな方が多いようですが…」
「え?」
「いつものこの時間より多くの明かりが点いてるんですね」確かに家々には明かりが灯され、寝静まった雰囲気はない。
それどころかまだまだ人の動きも感じられる。
その様子にハヤテは首を傾げていた。「ハヤテさん。いやですよーボケちゃあ」
「?」はくすくすと笑い出す。
「ふふっ。今日と明日はクリスマスだもの」
「ああ、そうだったんですね」思い出した様に頷くハヤテ。
そしてポツリともらす。「それならなんだか申し訳ありませんね…ゴホゴホ」
「なんでですか?」困った様に笑うハヤテに はキョトンとした。
「女性はこういった行事がお好きでしょう?私に付き合ってのんびり帰らず、早く帰りたかったのでは…」
「またそんな事をー。任務だったんだからハヤテさんには責任ないでしょう?」寧ろ任務の帰り道にかこつけてイヴの夜を気になる人――ハヤテと過ごせているのだ。
に不満はない。「はぁ、そう言って頂けるとありがたいんですね」
「…なんだかまだ納得してませんね?」
「ゴホゴホッ。い、いえ…」すっきりしない表情を見て思わずつっこんでしまう。
そして はハッと思い付き立ち止まる。「あ!じゃあひとつお願いしてもいいですか?」
「お願い、ですか。はい、なんでしょう」喜色に彩られた に頬を綻ばせたハヤテは了承の返事。
それを聞いた はぴょんと隣の建物の屋根に飛び移る。「少し待って貰えます?」
「ここで、ですか?」
「ここウチの屋根ですので気兼ねしないで下さい‥‥って言うのもなんか変だけど」は足元を指差して言う。
「あ、ここは さんのお宅だったんですね」
隣家の屋根から の家の屋根に飛び移ったハヤテは小さく言った。
は返事の変わりの笑顔を置いて家の中へ消える。
少しの時間ハヤテを待たせ再び姿を現した時、 の手には何かが乗せられたトレーがあった。
それは上品な白のティーポットと二組のティーカップ。
は湯気の立つ琥珀色の液体を優しくカップに注ぐ。「お待たせしましたッ。はいどーぞ♪」
「…紅茶?」
「ええ、今夜任務明けに飲もうと思って買っておいたクリスマスティーです」嬉しそうに語る からカップを受け取り、その香りを楽しむ。
「いい香りですね。クリスマスの紅茶があるなんて知らなかったんですね。ゴホ」
「疲れた任務後に飲む紅茶は格別ですよ♪特に今日は寒いから。少しの間ティータイムに付き合って下さいね」向けられた微笑みは紅茶の様に暖かい。
ハヤテはにっこりと笑みで返すと紅茶に口を付けた。
今年のクリスマスはなんてツイているのだろう、と幸せそうな の横顔を盗み見ながら…
翌日、この様子を目撃した同僚から根掘り葉掘り聞かれ真っ赤になってあたふたする二人の姿があった、とか。
++後書き…もとい言い訳++
クリスマス夢三本中、一番短いなー…(ちょい不満)
一番最後の行なんか取って付けたみたいだし。つか、実際そう…;;
僕にはやっぱりほのぼのしか書けんのだろうか(やっぱ不満)
もっと甘系を求めていた方には申し訳ないんですね…(口調を真似せんでいい)
うーん、来年の抱負は甘系が書ける様になる事かなぁ。
では、こんな夢を読んで下さってどうもでした!−2004/12/1・黙 涼風−