カンチガイ

 

 

 

 

買い物客の多い夕方の大通り。
今日はクリスマス。
その為に人出はいつもより多く、大きな荷物を抱えた はなかなか前へ進めない。
挙げ句、人にぶつかられよろけている。

「ぅあ、っとと」

そんな を支える腕。
隣を見上げれば幼馴染みであるうちはサスケ。

「一度に買い込むなって何度言ったらわかるんだよ」
「…サスケ」

呆れた様に と荷物を交互に見るサスケ。
無言で の荷物を奪うとさっさと歩き出す。
不器用なサスケらしい優しさだ。

「ありがと」

くす、と小さく笑って小走りで追いかける。
サスケは何も言わずにズンズン歩いていく。
も何も言わずに並んで歩く。
やがて が一人で暮らす家へと到着。
鍵を開け、扉を開け、無言のままに家の中へ。
サスケも気にせずに の後について家の中へと入る。

「ありがと、助かっちゃった」
「だからいつも買い過ぎるなって言ってんだろ」

キッチンで荷物を置くと、 はサスケに笑顔を向ける。
サスケも少しばかりの笑顔を返してくれる。

「うん、わかってる」
「そう言っていつも大量に買い込むのは誰だよ…」
「えーと、私?」
「ケツに疑問符付けるな。確実にお前だから」

わざととぼけてみせる にサスケはすかさずツッコミを入れる。

「以後気を付けます。で、お夕飯食べてくでしょ?」
「ああ」
「育ち盛りの食べ盛りに御馳走するからたくさん買うんだけどなぁ」
「…オレのせいかよ」

 

 

 

 

 

いつもより豪勢な食事を終え、キッチンからは食器のぶつかり合う音や水の流れる音が聞こえる。
はキッチンで片付けを、サスケはリビングでくつろいでいた。
片付けを終えた もリビングへ行き、そこにいたサスケの姿を見て固まった。
ある一点を見詰めて、固まる事しか出来なかった。

「オイ、 。これだけどな」
「‥‥‥」
?」

呆然と突っ立っている
サスケはどうしたのだろうと目前で手を振ってみる。

「…サスケ。何履いてるの?」

はたと気が付いた はポツリと呟く様に問う。

「何って靴下だろ?片方しかないぞ」
「片方しか、って…」
「見当たらん」

暖かそうな毛糸のソックス。
サスケが言うにはもう片方が見当たらないらしい。

「そりゃ、そう、よ…」
「は?」

は口元を押さえ、ふるふると震えている。

「ふふっ…あはっ、あははははははッ!」

爆発した様に笑い出す
苦しそうに腹を抱えてただただ笑っている。

「な、なんだよ突然」
「だ、だって…くく…あはは!もーダメー。サ、サスケが、サスケがーッ!」
「だから、なんなんだよ」

何故そこまで笑われなければいけないのかわからないサスケは不機嫌そうに を見ている。
は笑い転げていたが、なんとか笑いを押さえ込んで苦しげに言った。

「今日が何の日かわかってる?」
「クリスマスだろ…‥あ」

それくらい誰でも知ってる、という顔で答えたサスケ。
そして答えてすぐに気が付いた。

「ぷぷっ」
「チッ、笑うなっ」
「どーしたら間違えるのー!?も、オナカいたーい」

顔を赤くしてサスケが喚く。
しかし の笑いがそう簡単におさまる筈もなく、未だ笑い続けている。

「ルームソックスかと思ったんだよ!いい加減笑うのやめろよ」
「いやー止まんないんだもーん」

床に転げる に手を貸してソファに座らせ、再度笑いを止めるよう告げる。
余程ツボにハマったのだろう。
の笑いは絶える気配がない。

「じゃあ止めてやる」

何事かを思い付いたサスケはニヤリと笑ってそれを実行する…と。

「へ…?」
「ああ、止まったな」
「ちょ、ちょっ‥!」

驚いて目を見開いた
サスケは満足げに笑んでいる。
赤面して狼狽えている がされたのは、鼻の頭への可愛らしいキス。
は鼻の頭を両手で押さえ、サスケの顔を上目遣いで見上げる。
それを見たサスケは再びニヤッと笑う。
嫌な予感にビクッと後ろに仰け反った をサスケの腕が引き寄せる。

「プレゼントを入れる靴下だったよな、これ」
「そ、だけど…それが、なに?」

また何かを企んでいる様なサスケの表情。
逃げ出したいがしっかり抱き締められていては逃げられない。

「やるよ、プレゼント」

そう優しく呟いたサスケは片手で の両手を退けると、残った片腕できゅうっと抱き締めて…
触れるだけのキスを落とした。

 

 

 


 

++後書き…もとい言い訳++

クリスマス飾りのソックスをルームソックスとカンチガイしたサスケ。
そしてそれを笑うヒロイン。
…アホなネタを思い付いたモンですね、僕も(苦笑)
最後はソックスに入ったサスケが貰えました、って事で。
こんなの配布してスイマセン。やっぱ僕には甘系は無理なのかなぁ…(遠い目)

−2004/11/30・黙 涼風−