休暇 〜前日〜

 

 

 

 

 

「んむ〜。今日もよく働きましたぁ。疲れたヨー」

独り言をぶつぶつと呟きながら自室へ向かって歩く少女。
本来、腰の辺りでベルト固定されている筈の軍服は足の動きに合わせてバサバサと揺れている。
それもその筈。
Tシャツの上に軍服の上着を無造作に着ているだけなのだ。
そんなだらしない格好で歩いていると前方に見慣れた三人の姿。

「あ!オルガー、クロトー、シャニー!!」

相変わらず喧嘩をしながら通路を塞いでいたらしき三人は、自分の名を呼びながら全力で走って来る少女に視線を向けた。

「「「 !」」」

と呼ばれた少女は高い位置でまとめられた髪をなびかせてオルガに飛び付く。

「おわっ」

勢いに負けそうになってよろけるがしっかりと の体を受け止めてくれるオルガ。
クロトとシャニは不満げに騒いでいる。

!何でいつもオルガなんだよーっ」
「ウザイ…」
「だってオルガが一番筋力ありそうなんだもん♪」

そう言って はオルガにすり寄った。
オルガは満足げに の背に腕を回している。
それを見て更に騒ぎ立てるクロト。
シャニも凶悪な顔で睨み付けている。
ふと、ぶつぶつという音が近くに設置されているスピーカーからもれる。
何か放送がある様だ。
四人は反射的にスピーカーの方を見た。

『あー。 君、オルガ君、シャニ君、クロト君の四名は至急私の部屋まで来る様に。以上』

アズラエルからの呼び出し放送。
オルガ達は嫌そうに顔を歪めている。
対して は「何だろう?」と首を傾げている。

「とにかく行こっか」

は言いながらクロトの手を取ると走り出した。
走る必要などないのだが、 はじっとしていられない性格らしい。

「あぁっ!? !」

腕の中からすり抜けて行ってしまった へ向けて手を伸ばして固まっているオルガ。
シャニはそんなオルガに鼻で笑って見せると先に行ってしまった二人を追いかけた。
笑われた事で我に返ったオルガも後に続く。

「待てよ!お前らぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

「失礼します!アズラエル様〜お呼びですか?」

走ったせいか僅かに息を弾ませた
隣にいるクロトはケロッとしている。

「おや。お早いですね、 。と、クロト」
「走って来ちゃいましたぁ」
「僕はオマケかよ…」

へ笑みを向けたアズラエル。
その後、どうでも良さそうについとクロトへ視線を向ける。
それに気付かない はにこにこと笑みを浮かべている。
クロトは へ向けられたアズラエルの笑みに些か気分を悪くしながらもなんとか口を閉ざしている。
少し遅れてオルガとシャニがドタバタと走ってやって来た。

「揃いましたね。では話を始めましょうか」

いつまでも入り口に立ったままである 達を部屋へ入る様促すアズラエル。
は真っ先にパタパタと奥へと足を踏み入れる。
三人も扉を閉めて に続いた。

「何のお話ですか?」
「下らない話じゃないだろーなぁ」

首を傾げてアズラエルを見る と、不機嫌そうに顔をしかめるオルガ。

「下らないなど。皆さんに休暇を、と思ったんですけどねぇ。必要ありませんでしたか?」
「「「「休暇!?」」」」

四人は裏返りそうな声で叫び目を大きく見開く。
アズラエルはその反応を楽しむ様に見ている。

「ほんとに休暇くれるのか?」

クロトはアズラエルへ目を向けた。

「ええ、差し上げますよ。明日より三日間、存分に楽しんで下さいね」
「三日も?」

億劫そうに視線を持ち上げるシャニ。

アレも完成しますからね。そうなると忙しくなりますよ」
「あー、そういう事か」
「どっちにしろお休みだー♪わぁい、アズラエル様大好きぃぃ」

は大きく手を挙げてアズラエルに飛び付く。
一瞬驚くアズラエル。
しかしすぐに笑みを浮かべて の頭を撫でる。

「あぁっ、何してんだッ!」
「…抹殺!」
「アズラエル…ウザ」

三人が口々に叫ぶ。
しかし が張り付いている為に手を出す事は出来ない。

「そんなに喜んで貰えるなんて思いませんでしたよ、
「そりゃ喜びますよ!休暇なんて久々〜」

ぴょんぴょんと飛び跳ねながらもしつこくアズラエルに抱き付いている。
アズラエルは勝ち誇った様な笑みを三人へ向けながら の肩を抱く。

(((コイツ…いつか殺す!)))

「話はこれで終わりだろ? 、戻ろうぜ」

殺気を放つ三人を代表してオルガが口を開く。

「あ、そーだね。もぅ仕事も上がったんだし。じゃ、アズラエル様、私達失礼します」

にっこり微笑む
三人は を囲んでさっさと部屋を退出する。

「明日っから目一杯休暇を楽しむぞー!」

は廊下へ出た途端に拳を握り締める。
何もそこまで意気込んで休暇に挑む必要はないのだが、本当に久し振りの休暇なのであれやこれやとやりたい事が浮かんでは消える。

「んー楽しみ楽しみ♪ねぇ?シャニー」

浮かれる はシャニの腕に自分の腕を絡ませてシャニの顔を覗き込む。

「ん。楽しみだね」

その答えに満足そうに頷くと、するりと腕を抜いて三人の前に躍り出る。

「オルガもシャニもクロトも休暇楽しむんだヨー!んじゃっ☆」

ウィンクしながら可愛らしく敬礼すると身を翻して行ってしまう。

「「「待てよ!」」」

と叫ぶ三人を残して。

明日からは四人の休暇が始まる。

 

 

 


 

++後書き…もとい言い訳++

二万打記念配布夢
まずは前日編から
もっと短くなるかと思ってたら意外と長かったなぁ
常夏+アズ様の四人それぞれと少しずつじゃれ合わせてみた
1番美味しい思いしたのはオルガとアズラエル様かなー
あ…いや、シャニかも知れない……
腕を組んだって事は………ふふ、そうだよねぇ

−2003/7/29−