太陽

 

 

 

 

 

初めて会ったのは配属された翌日だった。
優しくて話しやすい先輩がいてホッとしたのを覚えている。
それが恋心に変わったのはいつの事だったか。
控えめな輝きの金髪。
その性格を表しているかの様な明るいオレンジの瞳。
そう、まさに太陽…‥

「うん、可愛い可愛いッ!いつミゲルと出会っちゃっても大丈夫よ!…多分」

は鏡の中の自分に向かって呼びかける。
これが彼女の一日の始まりなのである。
好きな相手に恥ずかしい姿は見られたくないもの。
毎日毎日髪のセットにしろメイクにしろ、力が入るものだ。
なにやら最後の弱気な一言が気にはなるが…。

〜終わったぁ?もーオナカ空いて切ないよー…」

少し開けたドアの隙間から顔を覗かせているのはルームメイトのローズ。
ドアに寄り掛かる様な格好で空腹を訴えている。

「あっ、ゴメン!行こっか」

わたわたと洗面所を出た はローズと共に朝食をとる為に食堂へ向かった。
少し遅めの時間帯でいくらか空いている食堂。
そこに見慣れた姿を見付けたのはローズだった。

「お、アスラーン!おはよーう」
「おはよう、ローズ。 も」
「うん、おはよ」

同じ年頃だからか、気が付いたら親しくなっていた少年パイロットのアスランだ。
アスランは穏やかな笑みを浮かべると二人に席を勧める。

座ってて。あたし持って来るからさ」
「え?いいよ、自分の分くらい…」
「いいからー」

ローズは有無を言わせずに を着席させると、食事を取りに行ってしまう。
ローズの厚意を無にするのも気が引ける。
首を傾げながらも座って待つ事にした。
すると向かいの席に誰かが腰掛ける。
列に並ぶローズの姿からそちらへ視線を移すとミゲルがいた。

「おはよー!

まさか朝一番に会えるとは思ってもいなかった は、一瞬呼吸が止まったかと思う程ドキリとした。

「お、おはよ。朝から元気だね、ミゲル」
「そうか?あれ、お前メシは?」
「今ローズが取りに行ってる」
「そか」

列の方を指差しながら答えた
そちらをチラッと見たミゲルは納得すると、自分のトレーに手を付け始めた。

「おまたせ〜」
「ありがとー」
「どって事ないよ〜」

ニコニコと笑顔を見せるローズ。
席に着くなりすぐに食べ始めた。
余程の空腹であった様だ。
四人は黙々と食事に専念し、聞こえるのは食器のかち合う音だけ。
しかしそれも食事の間だけの事。
食べ終われば雑談の時間がやって来る。

っていつもきっれ〜に髪まとめてるよなぁ」
「そ、そうかな…」

ミゲルの言葉に嬉しいやら照れるやら、思わず下の方を向いてしまう

「そうじゃん。ローズなんかいっつも下ろしてるもんな」
「ごめんねぇ?女らしさのカケラもなくってー」
「よくわかってんじゃん」
「うわ、ヒドイわ〜。しくしく」

感心した様な表情をして見せるミゲルと泣き真似をするローズ。

「でもローズは下ろしてる方が可愛いよ」
「きゃーん、もう だけだよ!そう言ってくれるのぉ」

ローズはガバッと の腕に縋り付く。
アスランは「また始まったか…」と呆れて見ている。

「そう言う の方が可愛いーよー」

またもミゲルは混ぜっ返す。

「きー!アンタあたしに恨みでもあんの!?」

バンバンとテーブルを叩くローズ。
ミゲルはしれっとしてお茶をすすっている。
とアスランは苦笑するばかりだ。

「ほんと仲いいよね、ローズとミゲルって」
「ああ、そうだな」

頷くアスラン。
顔を合わせる度にぎゃーぎゃーとふざけ合う二人。
はそんなローズが羨ましかった。

「あ、いや、でも…悪友っていう感じだよな」

慌ててアスランは付け足した。
がミゲルに想いを寄せているのは周知の事実である。
本人は密かに想っているつもりの様だが。
親しい付き合いをしている者は誰もが知っていて、敢えて静観している。
ともミゲルとも仲が良いローズの強い主張で影から見守る事になっているのだ。
余計な手出し口出しは無用、と。

「悪友かー。確かによく二人で悪巧みしてるみたいだしね」

クスクスと笑い出す
アスランは内心安堵して笑みをもらす。
ここで に妙な勘違いをさせたら、後でローズに何を言われるかわかったものではない。

「なんだよ、 。随分アスランと楽しそうだなぁ。俺も混ぜろよ」
「どうしよっかな?」
「んな!おい、ローズ、なんとかしろよ。俺の可愛い がアスランに!!」
「へー、それは面白そうだね〜」

ミゲルはふざけた様子で絶叫する。
ニヤニヤと笑うローズ。
その隣で は真っ赤になっている。

「だ、誰がいつミゲルのになったのー!?」
「そーゆー反応が可愛いんだ、 は」

満足げにうんうんと頷いているミゲル。
アスランとローズはこっそり顔を見合わせて笑った。

「んもー知らないぃッ」

自分のトレーを持って立ち上がった は小走りで逃げ出す。
素早くトレーを返却してダッシュで食堂を出て行ったのだった。

「あ!…置いてかれた」

ふしゅう、とテーブルに潰れるミゲル。

「ここで律儀にトレーを片付ける辺りが だよな」
「アスラン、感心するトコじゃないよ…」

逃げ去った の後ろ姿を見送りながらアスランは呟く。
そんなアスランにローズは呆れて溜息を吐いていた。

「ミゲルもあんまからかい過ぎないでよ。嫌われても知らないよ〜」

心の中で「有り得ないけどー」と付け足す。
決して口になどしないがアスランも同意見だっただろう。
ミゲルは に想われている事など知らないのだから言うわけにいかないのは当然だ。
一方、一人食堂から逃げ出した は部屋に戻っていた。

「今日は朝から嬉しいハプニングだったなぁ」

ささやかな幸せを噛みしめている模様。

 

――でも、近付き過ぎると溶けちゃいそうだから、今はまだ片想いでいさせて…――

 

 

 


 

++後書き…もとい言い訳++

短編書くの久々ですねぇ。
ってミゲル夢ってのが僕らしいですけどね(笑)
片想いの恋する乙女なお話のネタが降って来まして。
どこが夢なんだろーなー?
なんだかよくわからんお話になっちゃいました…(T-T)
因みにローズちゃんですが、気付いた方いますかね?
薔薇シリーズのヒロインだったりして(笑)
ちょっと友情出演して貰いましたv
いや、新たにキャラ像を考えるのもな…と思ってさ(こんの怠け者!)
一応続きのネタもあるので…そのうち続くかな、と思います。

−2005/5/7−